航空機とIT (48) 飛行安全とIT(1)自動化による安全性向上
以前に本連載の第6回で取り上げたフライ・バイ・ワイヤ(FBW : Fly-by-Wire)も、人的ミスをカバーする仕組みのひとつといえる。
操縦操作がそのまま舵面の動きに反映される方式では、機構上の限界まで舵面を動かせてしまう。ときには、それが失速などの原因になる。その点、FBWであればパイロットの操縦操作は「意志」を機械に伝える操作であり、それを受けて舵面をどう動かすかは飛行制御コンピュータの問題だ。
だから、「そんなに機首を引き起こしたら失速する」と判断した場合には、操縦桿を引く操作を行っても機首上げが過剰にならないように制御することができる。
最近の戦闘機の中には「パニック・ボタン」を備えるものがあるが、これも同じである。空間識失調(バーティゴ)に陥った等の場面で、このボタンを押すと自動的に水平直線飛行に戻してくれる。
こうした、自動化によるミスの予防あるいはリカバリーはさまざまな場面で見られる。
ただし、すでにあちこちで書いていることではあるが、大事なことなのでしつこく繰り返すと、システムと人間が喧嘩をする可能性にも留意しておかなければならない。
つまり、自動化システムがどういう動作原理に基づいていて、どういう場面への対処を考慮したものなのか。