この世に建物がある限り、そこには扉が付いてくる。
あるものの内と外との境界となるのが扉だが、今回紹介するのは、そんな内と外との架け橋であることを放棄した"扉をやめた扉"だ。
○森と化した玄関
杉並区の飲食店。
『天空の城ラピュタ』化していて信じられないかもしれないが、ここはもともとは玄関である。写真左側にかろうじて存在が認められる表札がその証拠だ。
店主に話を聞いたところ、もともと民家だったものを飲食店に改造した際、徐々に元からあったこの入り口が使われなくなったという事情が背景あるという。
「ウチは店としてやっていく! 」というアツい決意が民家側の入り口を封鎖させ、植物の王国に変えたのだろうか。
○ゲームのような幻想風景
どうだろう。
まるで1枚のだまし絵のようではないか。
元の造りは壁の色あせ具合で推測するしかないが、窓と扉の下にうっすらと見える斜めの線は、かつての階段跡だろうか。窓の位置からドアは入り口だったと推定されるし、2階に入り口があると言うことは、恐らく集合住宅だったのだろう。
しかしこの光景、なんだか既視感がないだろうか。僕には、ある。常々思うことだが、ある世代にとってのトマソンに対する妙な既視感は初代『スーパーマリオ』によるものではなかろうか。