くらし情報『抱きしめてヴィーナス - 探査機「あかつき」、金星への帰還 (2) いかにして「あかつき」は金星への再挑戦にこぎつけたのか』

2015年12月8日 15:30

抱きしめてヴィーナス - 探査機「あかつき」、金星への帰還 (2) いかにして「あかつき」は金星への再挑戦にこぎつけたのか

この推進剤をスラスターに送り込むのには高圧のヘリウムが使われており、そのためヒドラジン・四酸化二窒素のタンクと、ヘリウムのタンクとは配管でつながっている状態にある。そこで、ヒドラジンや四酸化二窒素がその配管を逆流しないように、専用の弁(逆止弁)が入っている。

ところが、この逆止弁にあるほんの少しの隙間から酸化剤の四酸化二窒素が漏れ出し、この弁のところでヒドラジンと反応し、結晶を作ってしまった。ちょうどヘリウムの通り道に邪魔者が現れたことになる。そのため十分な圧力のヘリウムでヒドラジンを押し出すことができなくなり、その結果エンジンに送り込まれるヒドラジンと四酸化二窒素の量が変わってしまった。

実は、ヒドラジンと四酸化二窒素を完全燃焼させると温度が高くなりすぎてスラスターが壊れてしまうので、本来は燃料を少し多めに足して燃やすことで、わざと燃焼温度を下げている。しかし、こうした経緯でスラスターに送り込まれる燃料の量が減ったことで、図らずも理論的に最適な燃焼に近くなってしまい、異常燃焼が起き、探査機の姿勢が乱れ、そしてスラスターが停止することになったと考えられている。またこの時点で、異常燃焼の結果、スラスターが壊れている可能性もあった。

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