2016年2月1日 19:30
理研、フッ素原子を持つ医薬品から分子プローブを合成する新しい手法を開発
しかし、フッ素を分子につなぎとめている炭素-フッ素結合は、反応性が低い化学結合のため、フッ素の化学変換は困難が予想される。そこで、古くから炭素-フッ素結合を切断するために用いられるニッケル錯体と、近年ホウ素化反応によく利用される銅錯体に着目。触媒としてニッケルと銅の2種類の錯体を同時に用いる手法を試みたところ、最高収率99%という極めて高い効率で、フッ素をホウ素に置き換える化学反応の開発に成功した。
さらに同研究グループは、今回開発した化学反応を用いて、高脂血症治療薬「スタチン」のひとつである「フルバスタチン」の誘導体を医薬品のモデル化合物として、分子プローブの簡便な合成を行った。フルバスタチンはひとつのフッ素原子(フッ素19)を持つが、実験の結果、効率よくフッ素をホウ素に置き換えることができた。さらに、2014年にイギリスの研究グループが報告した手法を得られた分子に用いることで、このホウ素をフッ素18へ置き換えることができた。つまり、わずか2つの化学変換で、医薬品の持つフッ素19をフッ素18に置き換えたPETプローブを合成できたことになる。
また、光親和性標識プローブとして標的タンパク質の同定に利用できる可能性があるアジド基を持つ分子の合成にも成功。