2016年2月17日 19:46
理研、「SACLA」でマルチビームライン運転に成功 - 利用機会拡大に期待
理化学研究所(理研)は2月17日、X線自由電子レーザー(XFEL)施設「SACLA」において2本のビームラインで同時にX線レーザーを発振させることに成功したと発表した。
同成果は理研放射光科学総合研究センター先端ビームチームの原徹 チームリーダーらの研究チームによるもので2月16日に米国科学誌「Physical Review Accelerators and Beams」オンライン版に掲載された。
「SACLA」は理研と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本初のXFEL施設。XFELはX線領域のパルスレーザーで、半導体や気体を発振媒体とする従来のレーザーと異なり、真空中で高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限がない。従来の放射光源と比較して10億倍もの高輝度のX線がフェムト秒(1000兆分の1秒)の時間幅を持つパルス光として出射され、高い輝度を活かして、ナノメートルサイズの小さな結晶を用いたタンパク質の原子レベル分解能での構造解析や、X線領域の非線形光学現象の解明などのために用いられている。
しかし、直線形の線形加速器を使うXFEL施設では、加速した電子ビームを通常は1本のビームラインに送るため、複数の実験を同時に行うことができない。