農工大、多孔質粒子を一段階で簡便に作製できる粒子作製技術を開発
その研究過程において、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて粒子を詳細に検討することにより、多孔質粒子が一段階で簡便に得られることを発見した。この粒子の形成は、o/wエマルションの油滴の中にw/oエマルションが自発的に形成する自己乳化現象に起因すると考えられる。今回得られた多孔質粒子の密度は非常に低いため、肺の気道に送達される薬物キャリアとして適している。さらに、高分子乳化剤によって粒子表面の分子修飾が容易であることからも、従来の経肺投与DDS用薬物キャリアの問題点を解決することができる。
一般に、疎水性高分子と乳化剤を溶解した有機溶媒と水を混合しても、表面が滑らかな粒子しか形成されない。従来の報告では、粒子を調製する際には、毎分1万5000~3万回転という非常に速い撹拌速度が検討されていた。それらの従来の研究に対し、今回の研究では毎分8000回転という比較的遅い撹拌を用いて試したところ、粒子の表面に穴が多く生じる現象の発見、解明に至ったという。
今回の成果は、従来の方法よりも機能性粒子を低コスト、低エネルギーで作製する技術としての発展が期待される。
さらに、粒子を利用するバイオ・医療材料、電子材料、光学・分子デバイスといった幅広い研究領域への波及効果も高いと考えられる。