京大など、複雑な生体分子を識別して溶けるゲル状物質を開発
さらに、複数の標的分子が同時に存在するかどうかを見分けるヒドロゲルの開発に関しては、その設計指針さえなかったという具合だ。
そこで研究チームは今回、小分子化合物が自律的に構造を作り出す「自己組織化」現象によってナノサイズ(1nm=100万分の1mm)の構造体を開発。そして、その機能化に取り組んだ。特に、水中でナノサイズの極細繊維(ナノファイバー)となり、それらが絡み合うことでヒドロゲル(超分子ヒドロゲル)を形成する小分子化合物(ゲル化剤)の高機能化を進展させ、非常に低濃度でゲル化する化合物の開発に成功してきたのである。今回、それらの知見を基に、酸化反応あるいは還元反応によって溶けるという特徴を持った「反応性超分子ヒドロゲル」の「BPmoc-F3」と「NPmoc-F2」が開発された(画像1~5)。
BPmoc-F3に関して確認された特徴の1つが、活性酸素種(ROS)の中で過酸化水素を選択的に見分けて溶けるというものだ(画像6)。過酸化水素は、各種「オキシダーゼ(酸化酵素)」がその基質を酸化する時に生成することが知られている。そこで、BPmoc-F3が形成するヒドロゲルにさまざまなオキシダーゼを埋め込んだところ、内包したオキシダーゼの基質をヒドロゲルに添加した時にのみゲルが溶けることが見出されたのである(画像7)。