『極悪女王』に描かれる「昭和の女子プロレス」が、いまも輝き続ける本当の理由─。
(何だかなぁ)
そう思いながら会場に行く。だがそこで目にした光景、熱量に圧倒されたことを現在も忘れることができない。プロボクシング、プロレスの会場で普段は男臭さが充満している後楽園ホール。その場が『全日本女子プロレス』の興行では一変していた。
会場が、当時の私と同世代、もしくは少し下の年代の女性で埋め尽くされている。
「チグサ~!」
「アスカ~!」
クラッシュギャルズがリングに入場すると、そんな叫び声とともに赤と青の紙テープが一斉にリングに舞っていた。試合が始まるとファンは立ち上がり絶叫し続ける。結末に感極まり涙を流す者もいた。
その光景はアイドルのコンサートよりも、宝塚公演に近く、さらに予想を超えた熱量を伴うものだった。
クラッシュギャルズと極悪同盟、そしてファンが一体となり生み出す熱量に圧倒された私は、以降の数年間、精力的に女子プロレスを取材し考察するようになった。
あの時代の熱狂は、特別なものだったと思う。
全日本女子プロレスは19年前に消滅した。だが現在も女子プロレスは続いている。『スターダム』『マリーゴールド』『LLPW-X』など数多くの団体があり、闘い模様は豪奢かつスタイリッシュ。