奥様はコマガール (36) 悩める薄毛男子に訪れた奇跡(2)
それは我が家の愛犬・ポンポン丸くん、ポメラニアンのオスである。
彼の厄介なところは、深夜の謎の行動に尽きる。
山田家の就寝は、原則としてベッドに僕とチーが並び、2人の枕の間でポンポン丸が寝るという川の字スタイルなのだが、ポンポンは僕らが寝静まったあとに、どういうわけかベッドの上をウロウロ動き回るという謎の深夜遊びを満喫する習性がある。
しかも、何回かに分けて。
もっとも、この深夜遊び自体は別にいい。
うるさく吠えるわけでもないため、僕らが起こされることもない。
しかし、彼がウロウロ動き回る場所が、いつも僕の頭部の周辺であることだけは、どうしても許せない。
ポンポンはなんの躊躇いもなく、寝静まる僕の頭髪を足で踏みつけ、せっかく生えてきた貴重な頭髪を次々にむしりとっていくのだ。
ブチブチブチ――ッ。
深夜に生々しい音が聞こえると、寝静まる僕の頭部に鈍い痛みが走る。
ポンポンの4本の足が、無防備な頭髪を踏みつけている証拠である。
「ポンポンッ、やめて! 」。
咄嗟に抗議するもむなしく、ポンポンは何やら踊るように、その4本の足をバタバタさせる。
どういう犬の習性なのかはまったくわかないが、とにかくポンポンが僕の頭髪を足で弄んだ結果、数本の頭髪が抜かれてしまうわけだ。