奥様はコマガール (36) 悩める薄毛男子に訪れた奇跡(2)
正直、泣きたい気分である。
せっかく、せっかく頑張って増毛したのに。
毎日欠かさず育毛剤を使ってマッサージも続けてきたのに……。
その努力の結晶である新しい頭髪を遠慮なくむしりとるとは、愛玩犬としてあるまじき行為だ。
ポンポンよ、おまえはご主人様への敬意というものを知らないのか。
思いやりというものを知らないのか。
そこで、ある夜の僕はポンポンの残酷な深夜遊びから逃れるべく、一大決心をした。
当然のようにベッドで寝ようとするポンポンを抱え上げ、そのまま寝室を出る。
やっぱり飼い主とペットが一緒に寝るのは良くない。
ケジメをつけるためにも、これからポンポンにはリビングで寝てもらうことにしよう。
かくして、僕はポンポンをリビングのソファーに寝かしつけ、再び寝室に戻った。寂しいけど、これも人間とペットの付き合い方だ。
すると、今度はリビングに閉じ込められたポンポンが、全力で泣き叫び始めた。
ギャンギャンギャンギャン、近所迷惑上等の大声で吠え続け、その声が寝室にまで届く。
最初は放っておいたら、そのうち静まるだろうと思っていたが、なかなかどうしてポンポンの執念深さは一筋縄ではいかなかった。