「お金」に興味を持つという事 - セゾン投信・中野社長の半生記 (7) 志高く運用に取り組んだ「未来図」、業界の常識と慣習の洗礼を浴びて”敗北”
当時から今に至るまで、証券会社でも銀行でも毎月必ずと言っていいほど新しいファンドが設定され、新商品として販売されます。
そして販売の現場には、新ファンドの販売予算が設けられ、それをクリアするため顧客が保有しているファンドの解約を勧め、その代わり金で新ファンドを買ってもらおうとセールスするのです。
これが投資信託の乗り換え営業、あるいは回転売買とも言われる、販売会社の一般的営業スタイルです。
なぜなら販売会社は販売手数料を得ることが最優先事項ですから、同じお客さんに何度も買ってもらいたいのです。逆に長期投資をされてしまったら回転が効かなくなって、手数料を稼げなくなる。
日本の投資信託がすべからく短命なのは、こうした事情によるのです。
ひとりひとりの「未来図」を長期投資で描いて行こう! と志高く運用に取り組んだはずのこのファンドも、業界の常識と慣習の洗礼を浴びて、あっけなく生きる屍(しかばね)の投資信託になってしまいました。
完全な敗北です。
そして日本の投資信託業界に長期投資が存在し得ない理由も、身をもって体験させられたのです。
まさに挫折でした。
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