しかし、総裁の発言の背景には、政治・経済両面における変化があり、ユーロ懐疑論者はそうした現実から目を背けていると考えられます。
政治面では、ECB内部で、ユーロ圏北部の国の理事と南部の国の理事との間で見解の相違が目立つようになるなか、ECBの従来の保守的な政策スタンスに反感を抱く南部の国の理事たちが、フランスなど北部の一部の国の理事たちの協力をとりつけ、北部の理事たちよりも多くの支持を集める可能性が高まっています。
こうした情勢変化を受け、守勢に立たされるのを回避するために、北部の国の理事たちが妥協する必要性が生じているとみられます。
また、経済面では、ECBは、ドイツの連立政権の主張を汲んで、イタリアやスペイン、ギリシャなどの追加的な財政緊縮策や民営化計画などの発表を待ってきました。
これらの発表が概ね一巡したほか、スペインが金融システムを強化する方針を打ち出すと、ドイツのショイブレ財務相が同国を支持する内容のコメントを行ないました。このように、ドイツも事態の進展にある程度満足し、今後は域内の経済成長の促進や経済通貨同盟自体の成功のために、ECBがより寛大な政策をとることを容認せざるを得ない状況になってきていると考えられます。