読書で味わう食欲の秋【TheBookNook#10】
文:八木 奈々
写真:後藤 祐樹
“読書の秋”もいいけれど“食欲の秋”も捨てがたい……。そんな欲張りなあなたにぴったりな今回のテーマ「食」。人が何を食べているかより、誰と食べているかを見ることだ。
というエピクロスの有名な言葉があるように、食と人はいつの時代も密に繋がっています。旬の肴とおいしいお酒、舌鼓を打つジビエ料理、ほっこり優しい懐かしの料理、思い出の味は人それぞれ。
小説の中の“食”は、ときに忘れていた自身の大切な“食”の記憶を思い出させてくれて、ぽっかり空いたまま気づかずにいた心の穴を埋めてくれます。
写真はイメージです。
今回はそんな心もお腹も満たされる“食”にまつわる本をご紹介させていただきます。
読み終えた後のご飯は、いつもよりも少しだけおいしく、隣にいる人はいつもより大切に感じられるかもしれません。
1.群 ようこ『かもめ食堂』
映画化もされた群ようこさんの本作品。映画を観た後でも構いません、ぜひ“小説”で触れていただきたいです。フィンランドを舞台にしている物語のためか、ベタっとなりがちな人間関係がほどよくドライにうつり、淡々とした日常描写に、読み終えるのが惜しくなるほどの居心地の良さを感じます。