読む前には戻れない……五感に染みる活字の恐怖。【TheBookNook #28】
この作者はきっと暖かい毛布で眠ったことがないのだろう……そう思わずにはいられません。世界は常に君に刃を向けているよ、味方じゃないよ、というのを私達読者にじっくり教えてくれるのですが、不思議と絶望はしません。むしろ気持ちよささえ感じてきてしまいます。なぜでしょうか。人間誰もがもつ“孤独感のツボ”のようなところに“それら”となって刺さってくるからかもしれません。
本作品の主要人物は“私”、“少女”、“長官”の三人だけ。逃れられない世界の結末と少女の絶望が並行して描かれることに1967年の作品とは思えないほど生々しい、セカイの息吹を感じます。フランツ・カフカが好きな方にはぜひ触れていただきたい冷たい一冊です。
■夏はやっぱりホラーで恐怖の魅力と新たな発見を
夏と言えばホラー……。いったいだれがいつ言い始めたのでしょうか。涼しくなりたいからといって安易に手に取ってしまえば後悔するかもしれません……。
でも、紙面に並べられただけの活字から、こんなにも五感が刺激されるのはホラー作品ならでは。読み手である自身が勝手に作り出した恐怖の形と向き合ってみたら、新しい扉が開けるかもしれません。
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