平安の「デキる女」小野小町センパイに学ぶ、自分を貫く生き方【能楽処方箋】
として描かれています。
それだけではなく、自らを陥れようとした黒主を許すという懐の深さも見て取れる。小町は仕事面で優秀だっただけでなく、人格を兼ね備えていた人物だということがわかりますね」
■齢99歳の世捨て人となっても変わらない知恵と誇り。「卒都婆小町」
一方、若い頃の小町と対比して紹介されたのは、「卒都婆小町」という99歳(!)の小町を描いた曲。
この曲のなかで描かれる小町には、すでに美しかった頃の面影はなく、定住しない生活をあえて選ぶ物乞い(世捨て人)となっています。
現代では一般的に、追善供養のために、お墓の後ろに立てる塔の形をした木片のことを言う「卒塔婆」。中世には聖地への道しるべとして建てられることもあった。
「卒都婆小町」あらすじ
舞台は旅の僧侶が、朽木の卒都婆*に腰かけている老婆に出会うことから始まります。
実はその老婆は、かつて絶世の美女として数々の浮名を流した小野小町が物乞いとなった姿でした。
*卒都婆(卒塔婆)…もとは釈迦の遺骨を納めた聖なる塚のこと。仏教の広まった各地で、これをかたどった塔(同じく卒都婆と呼称)が作られるようになり、仏の体を表すものとして、礼拝の対象となる。