■「観」とイメージしてみよう
今回のテーマを「観」にした理由には、私の深い思いがあります。
皆さんは「観」と聞いて、何をイメージするでしょうか。
インスピレーションは「能舞台の鏡松」から
能舞台における「松」の意味を、皆さんはご存知ですか?
演舞者は松に向かって踊るのが本来で、舞台上の松は鏡に映った松を意味しています。「鏡松」つまり演舞者は鏡に映った松を背に、観客に自分を観せることになるのです。
ある日、20年ぶりに能を鑑賞していたときに、突然「観」と一瞬のインスピレーションを受けました。
それをベースに王義之の「蘭亭序」の「観」「仰ぎ観る」という一節がミート。私は鏡に「映る姿」と実際に「観る姿」とを対比させて、自分のしてきた書の世界観を確認することができたのです。
こうしてできた作品が「観」です。
映すとは
鏡に映ったもの。そのままの形を映す。
つまり「書く」こと。日々の映し書く練習の蓄積。
観るとは
単に形を映すものではなく、そこにインスピレーションが加わること。つまり発想したものを「描く」こと。
この相対するふたつがうまく重なり合うときに作品が生まれます。