小規模宅地の特例を受けるための要件2つ (ママが知りたい実家の相続税特集5)


<取得者の要件>
次は、取得者の要件。法律的には、こんな言い回しとなる。

(1)配偶者が取得
(2)同居家族が取得し、申告期限まで引き続き居住し、かつ保有。
(3)配偶者または同居親族がいない場合において、その宅地等を取得した親族が、相続開始の3年以内にあるその者またはその者の配偶者所有の家屋に居住したことがなく、かつ申告期限まで引き続きその宅地等を保有
(4)生計一親族が取得し、申告期限まで引き続き居住し、かつ保有


今回のケースだと、母(配偶者)が取得するため、(1)に該当するので要件をクリア。よって、小規模宅地の特例が使え、実際は1億2,000万の相続税評価額が、2,400万円の評価となる。

■相続税で本当に怖いのは2次相続けれども、こんな一文を加えると、事態は一転する。

無事相続を終え、ほっとしたのもつかの間、父の看病疲れも出たのか、1年後に母も他界。

結論からいえば、私、妹ともに、取得者の要件は満たさない(※)ので、小規模宅地の特例は使えず、実家の相続税評価額は100%で計算しなければならない。
そうなると、実家の評価は1億2,000万円のままで、相続税の課税対象となる。

相続税の基本的な考え方として、「『代』が下に移る時に税金をかける」というものがある。父が亡くなり、母が遺産を相続した際には、財産は横にスライドしているだけ。けれども母が亡くなり、いよいよ娘世代に「代」が移った時が本当は怖いのだ。

「もし、小規模宅地の特例のことを知っていたら、マンションは買わずに実家近くの賃貸マンションに住んでいたのに!」と、この話の「私」は思うかもしれない。

「実は、家を買うといったライフプランを考える際に、小規模宅地の特例の概要を知り、それを踏まえた上で決断される方が得策な場合もあるのです」と、田中さん。

次回はいよいよ相続税特集の最終回!「都内に住む4人にひとりが税金を払う時代」です

(※)なぜ要件を満たさないのか、ひとつずつ見ていこう。
(2)の要件は、妹が結婚せずパラサイトシングルでいたような場合には満たすが、妹はすでに結婚しているので×。

(3)の要件は、いわゆる「家なき子」と言われ、子どもたちに持家がない場合であれば満たすことになる。ただし、赤文字の部分で「相続開始の3年以内に持家に住んでいてはダメ」という制限がかかっているので、母の体調が芳しくないからといって相続を見越して、慌てて娘達が持家を処分したとしても「家なき子」の要件は満たさない。
(4)の要件は、親が仕送りをしている子どもの場合などは要件を満たすが、今回の場合、娘は2人とも結婚しているので、要件を満たすとは考えづらい。




【連載:ママが知りたい実家の相続税 特集】

第1回 相続税、大丈夫? 本当は税金がかかるのに、それを知らない人たち
第2回 すぐわかる! 相続税対策の4ステップ
第3回 知っている人だけトクをする、相続税節税の基本
第4回 早わかり! 相続財産の評価額を小さくする「小規模宅地の特例」の概要
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