© 2017 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.
かわいい赤ちゃんなのに、なぜか着ているのは黒のスーツ! そのビジュアルが早くも話題になっている
『ボス・ベイビー』は、『マダガスカル』シリーズを手がけたトム・マクグラス監督の最新アニメーション。
ちょっと変わった設定のコメディ作品なのですが、単なるお笑い話ではない、とりわけ兄弟、姉妹がいる親としてはいろいろと考えさせられる内容の1本になっています。
■黒いサングラス、スーツを着こなした赤ちゃんはスパイ!?
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この『ボス・ベイビー』ですが、設定が特殊なのではじめに少しその説明を。
主人公は7歳の少年、ティム。ひとりっ子の彼は両親からの愛情を一身に受けて毎日を過ごしています。ところがある日、何の前触れもなく赤ちゃんがやってきます。なんとタクシーで家の前に乗りつけ、黒いサングラス、スーツを着こなし、ブリーフケースをもって(苦笑)。
両親は“新しい家族”“弟”といいますが、ティムは納得できない。というのも、この赤ちゃん、両親の前では愛くるしいが、ティムをライバル視してるようなところがある。そのティムの直観は大正解。
じつはこの赤ちゃんは見た目は赤ちゃんだけど、
心は中年のおっさんという“ボス・ベイビー”で、「ベイビー株式会社」から送り込まれた刺客だったのです。
この「ベイビー株式会社」は、天から人々に赤ちゃんを授けるのがおもな業務。ただ、ここにきて赤ちゃんの人気がペットの躍進で急降下。ティムの両親が務める「ワンワン株式会社」が近く発表予定の永遠に子犬のままの”フォーエバーワンコ”の販売を阻止すべく、送り込まれたスパイなのです。
■突然現れた“弟”に親の愛情を独占されたら…
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ティムにその正体はばれたものの、両親は実の子どもと信じて疑わない。ボス・ベイビーの巧みな作戦もあって、両親はメロメロ。小さな赤ちゃんをもつ親御さんはわかると思いますが、朝から晩までとにかく目を離せない。つきっきりで面倒を見ることになり、ティムはついつい放っておかれてしまいます。
作品の前段パートから痛切に感じられるのは、
ある日突然、お兄ちゃんになってしまったティム=小さな男の子の胸の内にほかなりません。
突然現れた“弟”という存在にティムはなすすべなく、いままで自分に向けられた
親の愛情を独占されてしまう。この理不尽さにティムはどうしていいかわらかない。就寝前、お決まりだった寝かしつけの絵本3冊、ハグ5回も、ボス・ベイビーの
夜泣きに負けて自然消滅してしまう。
それでも両親の気をひこうとするティムですが、その涙ぐましい努力も、ボス・ベイビーの泣き声ひとつにかなわない。そこからは否応なく兄になった男の子の戸惑いや寂しさ、不満ややりきれなさといった気持ちが痛いほど伝わってきます。
同時に彼は親の気をひこうとちょっとした子どもっぽい(実際に幼いから仕方ないのですが…)も行動も起こします。そこからは、兄となった子どものしがちな行動や心理が読み取れます。
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おそらくティムのとる行動は、多子家庭の親御さんならば“こういうことあるある”と思いあたる節があるはず。わかっているつもりでも、ついつい“お兄さんなんだから”
“甘えない”“我慢しなさい”としかって片づけてしまっていることがあるのではないでしょうか。
ただ、ティムの心に思いを寄せたとき、ちょっと反省させられ、親子のコミュニケーションについて考えさせられることでしょう。
■兄弟がいるって、ほんとうはとても楽しい!
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このあと、少し話が進むと今度はティムとボス・ベイビーは、あることで利害関係が一致。一気に手を組んで良きコンビぶりを発揮します。
ここから垣間見えるのは、ずばり
兄弟愛。行動をともにするうちにティムは実際は弟でもなんでもない赤の他人、しかも少し前まで宿敵だったボス・ベイビーに特別な感情を抱くようになります。
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たとえばいままでひとりで遊ぶのがおもちゃも独占できて楽しいと思っていたけど、相手がいるともっと楽しいことを知る。弟がいると楽しいことも喜びも倍になる。落ち込んだときは励ましてくれる。悲しいことや気のめいることが半減する。
そうした分かち合いがあることに気づいていきます。いいことも悪いことも一緒に経験して、本物の兄弟のように深く結びつく二人の姿は、すなおに感動を覚えるはずです。
■赤ちゃんよりもペット? これからの世界を暗示!?
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最後にもうひとつだけ。
ペットが赤ちゃんよりも愛される存在になったという設定は見逃せないポイントです。ペットが家族の一員という認識が世界で広まっていることはたしか。それを否定するつもりはありません。でも、赤ちゃんより愛される存在というのはいささかショックを感じたというのが本音です。
ほんとうにそれでいいのかと思うと同時に、いまの風潮を見ると、どこかそうなってもおかしくないように思えてきます。
それほど子どもへ逆風が吹いている。住民の反対運動で保育園の建設ができなかったり、妊婦が電車で嫌がらせを受けたり、なにかと子どもへの風当たりが強い。そういった社会に対して、大きな問いを投げかける作品にもなっています。
表向きは、大人から子どもまで笑えて大喜びのコメディ映画。でも、その題材の裏を読み取ると、親として子育てについて、子どもがのびのび育ちやすい社会について、少子化問題と、いろいろ考えさせられる大人の映画といっていいかもしれません。
『ボス・ベイビー』
3月21日(水・祝)より全国公開
優しいお父さんとお母さんと楽しい毎日を送る7歳の少年、ティム(声:芳根京子)。ところがその幸せな日々が終わりを告げる緊急事態が!ある日突然、新しい家族としてかわいい赤ちゃんがやってきたのだ。両親は弟というけど、この赤ちゃんなんだか怪しい。それもそのはず、この赤ちゃんは容姿は赤ちゃんだけど、中身は完全におっさんの“ボス・ベイビー(声:ムロツヨシ)”。そして彼は驚くべき秘密の任務でこの家にやってきたのだった!
見た目は赤ちゃんなのに中身はおじさんの“ボス・ベイビー”と彼を弟にもった少年を主軸に、友情と冒険の物語が進展する1作。大人も子どもも楽しめる全世界で大ヒットしている注目作です。
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