麻世妙、よみがえる大麻布~江戸時代の大麻布にも劣らぬ麻布の誕生~【後編】
プロジェクト始動から3年半、江戸時代に劣らぬ大麻布が誕生明治以降は機械紡績がもたらされたことで、機械向きではない大麻布は市場から追いやられていく。さらに第2次大戦後にGHQの指示下で制定された大麻取締法により、大麻生産や流通が許可制となり国内生産は激減。自然と世の中から大麻布が消えていった。古大麻布を調査する中で、近世麻布研究所・所長吉田真一郎さんは「速乾性にすぐれ保温性も高い。そして強靭なのに柔らかである。調べれば調べるほど、大麻布の良さが見えてきました。そして、なぜこんなにすばらしい素材を作らないのか?」との疑問を持ち始めた。そして“作らないのか?”という吉田さんの声が、京都帯匠誉田屋十代目・山口源兵衛さんやエイベックスに届いたことで“大麻布を甦らせる”という夢のあるプロジェクトへ繋がったのだ。
夢をかたちにするため、大麻布作りから流通などの管理に関わったのがエイベックス・グループ・ホールディングスの麻世妙プロジェクトリーダー・山嵜竜司さんだ。「初めて吉田さんの所有する江戸時代の晒した大麻布を触った時、これが大麻!?と柔らかさにすごく驚きました。一片の大麻布を頼りに、夢や想いを形にするのは、非常に困難であると同時に大きなやりがいがありましたね」と山嵜さん。大麻の紡績工場が少ないため、柔らかな大麻糸作りは紡績工場にとっても初めての経験。山嵜さんや工場スタッフは、何度も打ち合わせを重ね、通常の紡績方法ではない技術で大麻糸作りに臨んだという。「大麻から出来た糸で織った試作品を、吉田さんや山口さんと共に精査。改善して欲しい点をまとめて、ふたたび工場へと再依頼する。試作し再調整、それを何度も何度も繰り返しました」と山嵜さん。
そしてプロジェクト始動から3年半、ようやく江戸時代の大麻布に優るとも劣らない生地が完成する。甦った大麻布は、麻世妙(まよたえ)と名づけられた。平安時代より「妙」とは布を指す言葉。また妙には、不思議なほどすばらしいという意味もある。日本人の暮らしと密接な関係があった大麻布を再現するにあたり、麻の世の中は不思議であるという意味を込めた名前だとか。吉田さんは「多くの自然布がありますが、大麻布は、日本人にとって身近であり、特別な存在でもあった布。脈々と続いてきた歴史のある大麻布をこれからも尊重していきたい。麻世妙として日常生活に取り入れられていくことで、今の時代の人にも良さや特性が浸透することを期待しています」と締めくくった。
前編に戻る。【プロフィール】吉田真一郎さん麻布研究の第一人者。奈良県立民俗博物館「奈良晒」展、滋賀県愛荘町立歴史文化博物館・東近江市立能登川博物館「高宮布」展、新潟県十日町博物館「四大麻布」展など、主に江戸時代の苧麻布、大麻布の繊維と糸の研究を発表してきた。共著に『別冊太陽 日本の自然布』(平凡社/2004年)などがある
Photo by Kazan Yamamoto (c) FASHION HEADLINE
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