今年のプロジェクトの主役は椅子。ロエベがミラノサローネでコレクションを発表
シアリング(毛足を刈り込んだ羊革)やフェルトも、椅子の一部を覆うカバーとして、手触りのいいソフトな質感を出すのに使われています。また色の使い方も意外性があり、素材の面白さを際立たせて作品に与える影響を最大化。最終的に装飾の見え方が一新しています。それぞれの作品は、職人、素材、物の間で行われる創造的な対話の結果です。質素なスティックチェアが、とどまるところを知らない織物装飾への出発点となるのです。
「スティックチェア」という言葉は長い間農業従事者のものとみなされてきた、一見シンプルな構造と外見を持つ家庭用家具を指し、記録に残すほどのものではないと考えられてきました。最古の記録は、10世紀のウェールズの王であるハウエル・ザーの時代に残されています。スティックチェアの形はさまざまですが、共通するのはその構造で、背もたれと直立した脚部のスティックが、通常は楔(くさび)で座面に固定されています。
これらのスティックは、本プロジェクトが目指している創造的な織物装飾の着想源となるものです。今回は30脚のスティックチェアに装飾が施されました。そのうち22脚はアンティークのオリジナルで、残りの8脚はイギリスのスティックチェア専門のアトリエで新たに製作されたものです。