2023年12月7日 10:35
バレンシアガ 2024年夏コレクション - 衣服における“パーソナルなもの”
まるで劇場のように。もしアナロジーを見出すことが許されるのならば、今季のバレンシアガにおいては、パーソナルなもののなかに、人々を捉えるものが立ち現れるのだ、と言うことができるかもしれない。
したがって、衣服の構成要素は、ある種過去の刻印を帯びている。その最たる例が、ヴィンテージの素材だ。たとえば、最初にふれたカーコートは、3つのヴィンテージ素材を用いて仕立てたもの。いわば何者かの歴史の痕跡を残した素材を採用しつつも、溶けるようにオーバーなシルエット、左右で異なるトーンのアシンメトリックな表情、あるいは過剰な数のスリーブなど、再構築に独特の造形性を獲得している。
こうした構成方法は、トレンチコート、ダブルブレストジャケット、総柄のカーゴパンツとデニムパンツを組み合わせたボトムスなど、広く見てとることができる。また、ドレスにおいても、ヨーロッパからアメリカのヴィンテージショップから集めたアイテムを活用。
ゆったりとしたそのファブリックには、あたかも過去の時間を吸収しては放出するかのように、放射状にプリーツを施すことで、柔らかく優雅な表情をもたらした。さて、柔らかなシルエットと両極をなすのが、アウターにおいて顕著に見られる誇張された構築性だろう。