2023年12月19日 20:00
ヨーク 2024年春夏コレクション - マルタン・バレ、切断と緊張
また、バレのスプレーペイントの特徴のひとつが、線分の途切れである。つまり、カンヴァスの対角線上に噴射されたスプレーの線は、中心で分断されるかのように途切れ、その空白を逆説的に引き立てている。ヨークが着目するのは、こうした切断が生みだす緊張感だ。それはたとえば、ダブルステッチが突如消失する軽やかなジャケットやシャツ、チェック柄が不意に途切れるシャツなどに反映されている。この、異なる柄の切断と接続のあいだもやはり、ある種の緊張を湛えることは言うまでもない。
1967年より約4年のあいだ、バレは絵画制作を中断するも、72年に復帰している。以後5年間にわたって、格子や斜めの線分から構成された、バレを象徴する作品群を手がけてゆくことになる。ヨークは、これらの作品に見られる矩形の色面やバイアスのベクトルを、ウェアの構成に取り入れる。
ロングコートやノーカラーベスト、パンツには、フリンジを幾筋と走らせたスクエア型のファブリックをパッチワーク状に組み合わせる一方、ニットでは異なる編み地を複数取り入れることで、やはり切断と接続がもたらす緊張感をもたらしている。さて、1980〜90年代にかけてのバレは、カラフルな多角形をカンヴァス状に配置した作品を手がけるようになる。