朝丘雪路さん 認知症闘病で復活した津川雅彦さんへのキス
『お前のお父さんはいやらしい』『お父さんは嫌なヤツ』とさんざん言われたものでした。あるときその話を父にしたら、『俺が本当にいやらしいと思うか?嫌な人間だと思うか?』と。私が「いや、そうは思わないけど」と答えると、『だろう?皆、いいお客さまじゃないか。だったらお前は「お父さんの演技をそんなに信じてくれて、ありがとう」って、みんなに感謝しなきゃいけないんだぞ』。それからは友達に何か言われるたびに『お父さんの演技を褒めてくれてうれしいよ!ありがとう!』と答えるようにしました。すると、からかわれなくなったんです。父からは『考え方をちょっと変えるだけで、物事は逆転する』ということを教わりました」
’13年、真由子は大きな試練を迎える。朝丘さんがアルツハイマー型の認知症と診断されたのだ。
「医師からは、こう言われました。『あなたのことを忘れてしまうかもしれません。でも、それは愛情がないからというわけではないので、傷つかないでくださいね』。周囲の人からも介護の苦労を聞いていたので、すごく大変なんだろう、と覚悟していました。でも、もちろん介護をサポートしてくださる人もいたからなのですが、母との最後の日々は私が想像していたものとは違ったのです。