2021年8月20日 06:00
「患者を治し切るのは無理…」訪問診療医を絶望させた自宅療養の実情
急変を保健所に知らせたら、手を挙げてくれる病院が今日出たのですが……」
そう言って、言葉を選びながら田代院長は続ける。
「なんというかな……。その方はもう本当に助けられない可能性が高いんです。もともと延命治療を希望されている方ではありませんでしたから、その方が入院して病床を使うよりかは、もう少し治る見込みのある人に回してください、という本人の思いがあって……。ご家族は強く入院を希望しているんですが。おそらく在宅でのおみとりになるんじゃないかと思います」
この取材翌日、男性は“あまりに苦しいので入院したい”と意志を変更したというが、入院場所の調整は引き続き「厳しい状況」だという。
■「もう絶対的にマンパワーが足りない…」
自分の“最後”が近づいたときでも治療を受けることを諦めざるをえない悲惨な事態が、いま東京を襲っている――。
従来から在宅医療を専門にしている田代院長は、これまで自宅で最期を迎えることを選ぶ人の看取りもしてきた。
ただ、同じ高齢の方が亡くなるにしても、新型コロナウイルスで亡くなるのとほかの原因で亡くなるのとでは、本人や家族の受け止め方は違うと感じているという。
「みなさんの話を聞いていると、たとえば、悪性腫瘍や性肺炎、または食事が食べられなくなってしまった状態で亡くなるのは受け入れられるけれど、新型コロナウイルスで亡くなるということは受け入れられない、という方が多いように感じています。