2022年11月25日 06:00
佐野史郎語る「敗血症で死の覚悟」娘の版画が救ってくれた命
LINEで《驚かせて悪いけど、多発性骨髄腫だった》と妻に報告すると、《気がつかなくてごめんなさい》という返事が返ってきた。
「短いやりとりでしたが、お互い俳優という表現の仕事に関わっているので、僕には“この難局を乗り越えるためにも、冷静で、きちんと支え合える家族を演じ通しましょう”という決意にも受け止められたんです」
と、俳優らしい気持ちの切り替えをしたのだった。だからこそ、死の恐怖や不安に襲われることはなかったのだろう。
「俳優は与えられた役、シチュエーションを生きるのが仕事。患者に徹して、投薬など患者としてやるべきことをやっていると、余計なことを考える暇がないくらい忙しかった」
■あらたな血液のおかげで肌ツヤもよく髪も増えて
コロナ禍であったため、家族でも面会はできない。
「そのため、土曜日の夕食はお互い食卓にタブレットを置いて“リモート食事会”をしていました。病気の話題もあったけど、ほとんどが他愛のない日常の世間話です」
夫婦での穏やかな時間が癒しとなり、抗がん剤治療に移行できるまでに腎機能も回復していた。その矢先、敗血症になってしまった。
「解熱剤を飲んでも37度台に下がるのは1~2時間で、すぐに39度、40度に。