86歳現役のイラストレーター・田村セツコさんが語る「母と妹のW老老介護」
「母は、いわば天寿を全うしましたが、妹は病床で『お姉ちゃんと原宿で暮らしたい』と言い続けましたから、最期は切ない思いも強かったです」
その深い悲しみから救ってくれたのが、冒頭の絵日記講座での出来事だったという。田村さんが、妹の危篤の報を受けて駆けつけようとするとき、一人の生徒さんが言った。
「妹さんは、まもなく美しい世界に行くんです。苦しみからも解放されるんです」
改めて、自分は周囲のさまざまな立場の“先生”たちから助けられているのだと知った、と語る。
こうして20年前から現在まで続く、田村さんのひとり暮らしが始まった。
■女性ひとりでも元気に生きられるヒントが“セッちゃん”の日常のなかにあふれて
「この店は、私の“ご近所さん”のひとつで、お付き合いはもう30年近く。
母や妹の介護をしていたときには、当時飼ってた猫を預かってもらったこともありました。ここでインタビューを受けたり、片隅の小机で仕事をすることも」
原宿のビル地下にある「シーモアグラス」。
絵本やアートに出合える喫茶店として知られ、店内には田村さんの作品も飾られている。女性店主が語る。
「うちのお客さまのなかには、子供のころからのセッちゃんのファンという方もいらして、ここでバッタリということも。