山本陽子さん 初演劇賞の賞金も全額寄付…大女優が30年続けていた「盲導犬育成支援」
と、スタッフらを優しく激励したのだ。同行していた倉島さんも山本さんといっしょに盲導犬との歩行を体験したという。
「アイマスクを着けて、盲導犬に引かれながら、実際に歩道を歩いてみました。山本さんは、盲導犬の歩みが意外に速いことに驚いていました。
『速いわよねぇ、どんどん歩いてしまって少し怖いくらい。突然、犬が止まるのは障害物があるときなのね』と、言っていましたね」
当時の盲導犬協会の経営はかなり厳しかったようだ。施設の前には、古新聞や空き缶なども積まれていた。
「ボランティアの人たちが集めたもので、それを売却して犬たちの餌代に充てているとのことでした」
山本さんはその前月に、舞台『おはん』の演技が評価され、菊田一夫演劇賞を受賞したばかり。
「山本さんはチャリティゴルフ会の収益金50万~100万円を中部盲導犬協会に毎年寄付していました。この年は、菊田一夫演劇賞の賞金も袋ごと協会に渡していたのです。菊田一夫演劇賞は大衆演劇の舞台ですぐれた業績を残した芸術家を表彰するもの。
山本さんが大きな賞を受賞したのは初めてのことで、生涯の名誉でした。その賞金である50万円をすべて寄付した姿を見て、すごい女性だとあらためて感じました」