ベア続出も高笑いするのは大企業だけ――日産「下請けいじめ」に透けた縮図
3月7日、日産自動車に対する再発防止勧告について公正取引委員会が会見を開いた(写真:共同通信)
日経平均株価が史上初めて4万円台に乗り、今春闘は満額回答が続々。政府は「デフレ脱却」宣言を検討、との報道も飛び交い始めた。しかし、それは「大企業に限った『夢物語』」(中小企業経営者)のようだ。大手による労使交渉の集中回答日である3月13日をむかえたが、中小のまなざしは冷ややか。歴史的な円安進行で輸出型の大企業が過去最高益をたたき出す一方で、輸入物価高騰のあおりを受け賃上げ原資の確保すらままならない企業もあるのだ。
3月7日、下請け業者への納入代金を一方的に引き下げたとして、公正取引委員会は日産自動車に下請法違反を認定し、再発防止を勧告した。このような“下請けいじめ”が物語るように、賃上げ最大の障壁はサプライチェーンの頂点に君臨する大企業にあるのかもしれない。
《過去最高のベースアップ》《組合要求超える回答》。
今春の労使交渉は13日の集中回答日を待たず、高水準で早期決着する大企業が相次いだ。「物価高を上回る所得」(岸田文雄首相)の実現で、デフレ下の「失われた30年」と決別――。ここまでなら、そんなシナリオを描けるかもしれない。