ビートたけし 初挑戦の恋愛小説にこめた「亡き父への追憶」
元の原稿はノート4冊に手書きされた“アナログ”なものだった。
「その手触り、質感を損ないたくなくて、あまり編集者の手を加えませんでした。ただ、秋には出版したいという意向でしたので、怒濤の作業が続き、けっきょくゲラを書店員さんに見ていただくことはできなかったんです」
本作で描かれるのは男女の恋愛ばかりでなく、友情や親子愛もテーマになっている。
とくに書き込まれているのは、主人公が2時間をかけて老人ホームへ通い、母親を見舞う描写。介護の現場については「たけしさんご自身、かなり取材もされていました」というほど詳細だ。この描写に、たけしの“ある思い”を感じると、テレビ局関係者が語る。
「じつはたけしさんは若いころ、脳梗塞で倒れた父親を9年間も介護しているんですね。まだ駆け出しで金銭的にも余裕がないから、家族総出で介護。
たけしさんは朝6時に病院にお見舞いにいって、下の世話をして、朝食を食べさせてから、浅草の舞台に舞い戻る生活をしていたそうです」
その父は77年に亡くなっている。