96歳ピアニストが語る「人生100歳時代」を生ききるための知恵
39歳、ベルリンでデビュー。以来、精力的に演奏会を行った。
「日本では大学を卒業したら一応プロフェッショナルですが、ヨーロッパでは常に成長し続けなければ、二度と演奏会に呼ばれません。だからずっと、すごい剣幕で勉強していましたよ(笑)」
日本への帰国は61歳。一般的には「リタイア」がよぎる年齢だが、室井さんが戻ってきた理由は、真逆だった。
「60歳を過ぎて、いよいよ人間としての成熟期を迎えたと思ったわけです。でもドイツにいたままだと、どこかで『あの人はエトランゼ(よそ者)だから』と見られてしまうかもしれない。ならば日本に根を下ろして、世界に対抗しようと」
最後に、室井さんはこう語る。
「結局ね、私はただピアノが好きなだけなの。でも、それが今日まで私を現役でいさせてくれているんでしょうね」