2018年4月6日 06:00
美智子さま 沖縄戦遺族の心を開いた「足を引きずりながらの慰霊」
73年前に、激しい砲火にさらされた場所だとは想像できないほど静かな海。「国立沖縄戦没者墓苑」が建つ摩文仁の丘には、強い日差しの下、穏やかな風が吹いていた――。
3月27日、沖縄に到着された天皇皇后両陛下は、真っ先にその丘を訪れて、東京から持参された白菊の花束を捧げ、拝礼された。
そこで美智子さまが、もっとも長い間、話をされたのが、元沖縄県遺族連合会長の照屋苗子さん(82)だった。
照屋さんが美智子さまと対面するのは、今回で5回目となる。初めて会ったのは、皇太子ご夫妻時代の’87年。2度目は即位された天皇陛下が、歴代天皇として初めて沖縄県を訪問した’93年だった。照屋さんは、このときの思いがずっと心にこびりついていたという。
「父をはじめ家族5人を亡くした私は、終戦時、9歳でした。2度目の対面のときに両陛下から『ご苦労なさいましたね』と、お声をかけられ、涙が止まらなくなってしまったのです」
戦後の混乱、困窮のなか、身を粉にして自分たちを育て、その約20年前に、68歳で亡くなった母・ツルさんのことが心に浮かんだのだ。