胸をグッとつかまれる!小説家を描くマンガ『ものするひと』
詳しいルールは作中で描かれているのだが、遊びながらふと彼が洩らす心情に、胸をぐっとつかまれる。
どんな職業であってもそうだけれど、小説家になった理由や、小説を書く(仕事をする)上で目指すものや、大切にしているものというのは、人それぞれだ。それが押しつけがましくなく、自然とわかるような形で描かれている。
続く第二話ではさらに、女子大学生のヨサノとの出会いをきっかけに、主人公の気持ちがモノローグで語られる。好きなことを仕事にして生活していくことの自由さ、そして怖さ。
とはいえ、テーマや内容は決して難しいものではなく、むしろするすると読んでしまう。読んでいくうちに、ヨサノであったり、杉浦たちが通うバーの店主であるハナヨさんであったり、主人公以外の人物にも、自然と興味が湧いてくるようになっている。彼らが興味のあるものや好きなもの、送っている生活。
ちなみにタイトルに含まれる「ものする」というのは、『広辞苑』によると、「ある動作をする。ある物事を行う」という意味であるらしい。つまり、あらゆる人は「ものするひと」なのだ。それを知ると、タイトルもより味わい深い。