「幻の作品」が再起動する。今に寄り添う“触れ合わない“ラブストーリー、『アーリントン〔ラブ・ストーリー〕』白井晃×南沢奈央インタビュー
(白井)
「こんなにも早く、もう一度やると決断してくださって、生きる気力が湧いてきました」(南沢)
『アーリントン〔ラブ・ストーリー〕』は、2018年に上演された『バリーターク』で注目を集めたエンダ・ウォルシュによる戯曲。『バリーターク』で彼の作品の魅力にはまったという白井が再び挑む今作では、どこかに閉じ込められている若い女・アイーラと、それを監視する若い男が直接顔を合わせないまま会話を交わし合う。
「本人は明言していませんが、彼にこれを書かせた背景は、たとえばヨーロッパに入ってきた難民たちがひとつところに集められて出ることもできないような状況だとか、社会の格差、紛争から生まれた弱者の有りよう……。そのようなことがあったと思うんです。それが、コロナ禍以降僕らが置かれた状況に酷似してしまった。感染を予防するために自分たちで決めたガイドラインによって圧力をかけあい、規制しあっている。人々が管理しあっている。それは、まさにアイーラがカメラでずっと監視されている状況と変わらないと思うんです。
よくぞこんな凄い作品を書いたな、と思います」(白井)
「私は閉じ込められている設定なので、声だけを聞いてやりとりしていかなくてはいけない。