「幻の作品」が再起動する。今に寄り添う“触れ合わない“ラブストーリー、『アーリントン〔ラブ・ストーリー〕』白井晃×南沢奈央インタビュー
稽古を通じて、ふだんどれだけ直接顔を合わせることで影響し合っていたのかを実感しました。登場人物も少ないし、一見静かな戯曲に見えますが、白井さんも翻訳の小宮山(智津子)さんもこれはエネルギッシュな作品だとおっしゃっていて。稽古を重ねていくうちにその感覚がわかってきたんですが、広い空間に自分ひとりでエネルギーを出していくのは大変で、それだけにすごく面白い作品だと思います」(南沢)
「直接会うことのない、声だけで心を通わす男女の物語に〔ラブ・ストーリー〕というタイトルがついているのが切ないよね。いちど時間を置いたぶん、今はいい意味でこの作品を俯瞰して見られている気がします」(白井)
今の状況で観てもらうことで響くものがある
白井が語るように、「直接会うこともできず、離れた場所から声だけで交流する」という今作の設定は、コロナによって切り離された人々と重なる。
「以前稽古していたときは物語の中でしかありえなかったできごとが、とても現実的になってしまった。むしろ、今この時期にやるべきものとしてチャンスを与えられたんじゃないかなと思えるようになりました」(白井)
「自粛期間中、『アーリントン』のセリフをことあるごとに思い出しては『これはまさにいまの私の気持ちだ!』と思っていました。