2024年4月23日 10:30
『オッペンハイマー』公開記念トークイベント開催 平野啓一郎「現時点でのノーランの集大成」
だと指摘した。
原作も読み込んでいるふたりは、原題の「アメリカン・プロメテウス」に触れ、平野が「ノーランはプロメテウスになぞらえるようなオッペンハイマー観を皮肉的な目線で見ている」と指摘。
大島は「人間の生活に欠かせない火をもたらしたプロメテウスだが、原爆の開発をそれになぞらえるのは迂闊。そこにノーランが乗っかっているかいないかという視点は重要だがあまり語られていない」と応じた。
大島育宙
ノーランの全作品を観返したという平野は、「2000年代は敵を悪魔化して戦争を正当化するような言説があったが、『ダークナイト』トリロジーなどを観ていると、ノーランはアメコミのヒーローを使って“悪との戦い”というものを非常にまじめに考えていた監督。どれだけダメな社会に見えてもそれを全滅させてはいけない。バットマンという超法規的な存在が悪と戦うが、最終的には、バットマンがいることでジョーカーのような存在が出てくるから、市民社会が自立的に対処しなければいけないという終わり。そういった“必要悪としての正義”の描き方がある意味でオッペンハイマーにも反映されている。
その意味ではノーランはオッペンハイマーに対して懐疑的なところがあるのではという印象を受けました」