くらし情報『豊かな感受性でヘレンを演じた平祐奈に感服。演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た、『奇跡の人』』

2022年6月5日 12:00

豊かな感受性でヘレンを演じた平祐奈に感服。演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た、『奇跡の人』

この場の照明が何とも効果的なのである。

「目にとっての光、心にとっての言葉」。さらに、「私はヘレンを愛します、ずっと」といった心に届く台詞をメリハリを付けて話す高畑がいい。

そして、井戸のポンプを激しく押し続けていっぱいの水を手に、また頭から浴びるヘレンの名場面。その一瞬の平。「水」という物質から感じ取った“世界”を全身で表現した。顔、手、肩それぞれを豊かな感受性で演じていた。驚いた。
平は最優秀新人賞の最有力候補だろう。母ケイトの村川絵梨、エヴ伯母の増子倭文江、召使いヴァイニーの山野海。女優陣が敢闘賞だ。

森新太郎の演出。例えば2週間の隔離生活を終えて再開した母と抱き合う、また父にも抱かれるヘレン。大いなる見せ場を大仰にではなく、自然の動きの中で見せるなど細部に目が行き届いて秀逸だった。

プロフィール
大島幸久(おおしま・ゆきひさ)
東京都生まれ。団塊の世代。
演劇ジャーナリスト。スポーツ報知で演劇を長く取材。現代演劇、新劇、宝塚歌劇、ミュージカル、歌舞伎、日本舞踊。何でも見ます。著書には『名優の食卓』(演劇出版社)など。鶴屋南北戯曲賞、芸術祭などの選考委員を歴任。「毎日が劇場通い」

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