くらし情報『“ここに流れる時間”を描く。是枝裕和監督が語る『舞妓さんちのまかないさん』』

2023年1月27日 18:00

“ここに流れる時間”を描く。是枝裕和監督が語る『舞妓さんちのまかないさん』

最初に面白いと思ったのは“電話”だったんです。電話の前に連絡先を書いた紙が貼ってあったんですけど、ぜんぶ3桁の内線番号だったんです。要するに彼女たちの暮らしはすべてが“ここ”で完結している非常に小さな世界で、その中で互助会的な役割も果たしていて、他人の領域には踏み込まないようになっていて、お茶屋さんは料理はつくらないとか……明快なんですよ。

役割はハッキリしているけど、お互いが支え合っていて、それらが内線でつながっている。コロナになって人の生活がどんどん外に向かわなくなった時に取材に行ったので『これから僕らが向かう世界のひとつの完成形が300年前からここにあったのか』と。もちろん、この暮らしで自分が現在の仕事をやっていけないことはわかっているんですが、何かのヒントになると思ったんです」
花街の屋形は、修行中の“仕込みさん”や、舞妓さん、芸妓さん、屋形を切り盛りする女将さんが同じ建物で共同生活を送っている。女将さんが“おかあさん”と呼ばれることからもわかる通り、屋形の中の人間は家族も同然。しかし彼女たちに血縁関係はなく、支え合う関係ではあるが、いち舞妓・芸妓としてはお互いがライバルでもある。

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