“ここに流れる時間”を描く。是枝裕和監督が語る『舞妓さんちのまかないさん』
「ある場面で、登場人物がこの街の時間の話をする場面が出てくるんです。このシリーズが描いているのは共同体なんだけど、その背後に積み重なっている時間の方がむしろ主役で、その視点さえ忘れなければ、むしろ何をしてもいいと思っていました」
京都の花街では暦が生活の中で重要な役割を果たす。季節が変われば食べるものが変わり、気候が変われば室内の装具を入れ替える。新しい年を迎え、桜が咲いて、陽が長くなり……のサイクルを繰り返しながら、そのサイクル=輪の中で暮らす人々も成長し、同じことをしているはずなのに去年とは違う立ち位置にいたり、役割が変わったり、心の内が違ったりする。この“円環する時間”こそが『舞妓さんちのまかないさん』の真の主役なのかもしれない。
「彼女たちの時間も同じ着地はしないんだけど、少しずつ大きな輪になっていくイメージでいました。時間の輪の波紋が広がっていくようなイメージで考えていたんです」
ちなみに是枝監督の作品で“円環する時間”と聞いて『海街diary』を思い出した人も多いのではないだろうか。
「暦の問題というか、生活が四季の中にあって、季節ごとに食べるものが決まっていたりする。