初世吉右衛門の『摂州合邦辻』合邦に思いを馳せて──。中村歌六、秀山祭への意欲を語る
が合邦をされていた(1956年、明治座での公演)。昨年亡くなった市川段四郎さんから、中車のおじが『初代さん(吉右衛門)が好きで、若い頃からずっとよく見て、尊敬して、メモを取って、その芸を忠実に覚えていた』と聞いていたので、それが一番秀山さまに近いのではないか。そこから、他の方のも拝見して、自分なりに組み立てていきました」
義理の息子俊徳丸への邪恋にとらわれた娘、玉手御前を手にかける合邦は、元侍の廉直な僧侶だ。
「この前までやっていた弥左衛門(『義経千本桜』すし屋)では、言うことを聞かない息子を殺し、今度は言うことを聞かない娘を殺す。しかも両方とも“モドリ”がある」。絶命直前の玉手の告白により、玉手が仕組んできた“策”が明らかになり……。「だから、もうちょっと落ち着いて話を聞けばいいのに(笑)!娘は本当にかわいいんですよね。懐かしさと嬉しさと、複雑な心境になるんでしょう。
けれど、仏門に入った人間としては許せない部分がある。でもやっぱり、情のある人ですね」。
一方の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』は、2016年に歌舞伎座で初演された新作歌舞伎で、原作は夢枕獏の伝奇小説。唐の都、長安を舞台に繰り広げられる若き僧、空海と儒学生・橘逸勢の物語だ。