初世吉右衛門の『摂州合邦辻』合邦に思いを馳せて──。中村歌六、秀山祭への意欲を語る
歌六は初演に引き続いて、怪しげな老人、丹翁を演じる。
「飄々として、フラフラしながら何となく生きているけれど、ある時になるとピシっと、筋の通った立派な人に。多面性があるので、作っていくのはなかなか楽しいお役です。劇中劇があったり義太夫が入ったりと、非常に面白いお芝居。お爺さん役がふたつ続く?まあ、最近多いから大丈夫です(笑)。」
2016(平成28)年歌舞伎座「四月大歌舞伎」『幻想神空海』より、丹翁を勤める中村歌六(C)松竹
話題が再び初世吉右衛門の芸に及ぶと──。
「小さいころによく真似をしていたくらいだから、見ていたとは思うのですが、覚えていないんです。ただ、皆さん『すごいんだから!』『本当にすごいんだから』というので、本当にすごいんだなと──。一緒に撮った写真はあるんです。
多分お墓参りで、手を繋いでもらっているのですが、なぜかもう片方の手をポケットに入れていて、これはちょっと失礼すぎると(笑)。でも、見ていた、というのは財産です。覚えていなくても、どこかに何かある。それは、ひとつの財産として大事にしていきたいなと思います」
二世吉右衛門との思い出も、数えきれないほどあるだろう。