舞台人・加藤健一、渾身の一人芝居であった ー演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『スカラムーシュ・ジョーンズあるいは七つの白い仮面』
円形の舞台装置を自分で半回転させたり、墓穴掘りやパントマイムも演じる。それは長い舞台経験の中で培ってきたカトケンの“七色の芸”と言えるだろう。
父親の母国であるロンドンに着いたスカラムーシュは語りを止める。孤独の世界を生きてきた半生は、辛く、また喜怒哀楽を体験し尽くし、胸に秘めた道化の精神。冒頭から灯し続けたロウソクの灯を吹き消すと、死後の世界だろうか。暗転、そしてブランコに乗った道化が空中から降りてくる。なんてステキなエピローグなのだろう。
この主人公のみならず、七つとは言わないが、人はだれしも二つや三つの仮面を生きているかも知れない―と思わせる物語世界であった。そして、それは加藤健一という舞台人の半生と重なるようであった。(8月18日所見)
撮影:石川純
<公演情報>
加藤健一事務所『スカラームーシュ・ジョーンズ または七つの白い仮面』
2022年8月18日(木)~2022年8月28日(日)
会場:本多劇場
プロフィール
大島幸久(おおしま・ゆきひさ)
東京都生まれ。団塊の世代。演劇ジャーナリスト。スポーツ報知で演劇を長く取材。現代演劇、新劇、宝塚歌劇、ミュージカル、歌舞伎、日本舞踊。