2022年11月16日 12:00
【観劇レポート】人種、宗教を越えた友情と歌を浴びる快楽と。新キャストの好演も光る2022年版ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』
写真提供/東宝演劇部
ウーピー・ゴールドバーグ主演の大ヒット映画を原作に、ウーピー自身のプロデュースと巨匠アラン・メンケンの作曲によりロンドンで舞台化され、ブロードウェイにて改訂上演後の2014年に日本初演された『シスター・アクト』。その後たびたび再演され、もはや日本ミュージカルの定番となりつつある同作が、11月13日より東急シアターオーブで上演されている。日頃のストレスを勢いよく吹き飛ばし、気持ちを無条件でアップリフトしてくれる作品だけに、コロナ禍に入ってから初の上演はまさに「待ってました!」というところだ。
殺人事件を目撃してしまったクラブ歌手のデロリスが、犯人に見つからないために身を寄せた修道院で聖歌隊の指導を任され、音痴のシスターたちを特訓するうちに友情が育まれていく――。本作のストーリー上の最大の魅力は、人種や宗教を越えて生まれるその友情にある。だがその尊さに何のてらいもなく素直に涙できるのはやはり、それまでの過程で私たちの心を解く“歌”の力があってこそ。デロリスに導かれて歌うことの愉しさを知っていくシスターたちの姿が、歌を浴びるというミュージカル鑑賞の快楽に目覚めていく私たち自身と重なり、音楽に、舞台に身を任せるための素地を整えてくれるのだ。