2023年8月21日 12:00
【おとなの映画ガイド】ボクシングシーンがハンパではない! 沢木耕太郎の小説を佐藤浩市と横浜流星のダブル主演で瀬々敬久監督が映画化──『春に散る』
、チャンピオンの中西(窪田正孝)。翔吾の母(坂井真紀)……。
沢木耕太郎の著書のタイトルに『世界は「使われなかった人生」であふれてる』というのがあった。映画で「ありえたかもしれない人生」「使われなかった人生」に思いをはせるエッセイ集だ。本作も一本の映画になりそうな「使われなかった人生」であふれている。それぞれの登場人物がわずかなシーンだけでも印象的にきっちりと描写される。そういえば、瀬々敬久監督の代表作ともいえる『64-ロクヨン-』もそうだったなあと思い出す。
そんな人間ドラマに加えて、あえて「スゴい」といわせてもらいたいのがボクシングのシーンだ。
ボクシング指導と監修にあたったのは、松浦慎一郎。ボクシング界の功労者に贈られるエディ・タウンゼント賞を受賞した名トレーナー。横浜流星も窪田正孝も、彼のトレーニング指導を受けた。
流星からは「今まで松浦さんが作ったことのないボクシングシーンにしてください。 そして、 プロから見てカットでごまかしていると思われないようにしてください」 と真剣な眼差しで頼まれたという。
特にクライマックスの世界戦では、全12ラウンドを4日間にわたって撮影。