2023年9月12日 07:00
進化してんのかしてないのか、喜劇なのか悲劇なのか―2023年版『ガラパコスパコス』公演レポート
撮影:細野晋司
岸田國士賞受賞作家で演出家のノゾエ征爾が自身の劇団「はえぎわ」で2010年に初演した代表作『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』。幾度かの再演を経ての2023年版が、9月10日(日)に東京・世田谷パブリックシアターで開幕した。竜星涼演じる社会に上手く馴染めない青年・太郎と、高橋惠子演じる老人ホームを抜け出した老女・まちこを中心に、総勢15名で繰り広げられる群像劇だ。
黒い壁で全体が覆われたシンプルな空間。ガレージのようなもののシャッターが唐突に開き、太郎(竜星)が飛び出してくる。その後も数々の人物が舞台上に現れるが、冒頭7~8分は言葉を発することなく、壁や床に、チョークで絵や場所や役名を書き込んでいる。太郎が壁に電球とトイレを描くとそこが太郎のアパートの一室になる、という具合。初演から使われるこの手法は、本作の特色ともなっている。
太郎はピエロの格好をしている。コミュニケーションが苦手なわりに、派遣ピエロなんていう社交的な仕事をしている矛盾を孕んだ人物。小顔・長身で通常はスタイルの良さが際立つ竜星だが、猫背気味でどこか怯えた様子の太郎は、一目で“陰キャ”であることが見て取れる。