2023年6月28日 14:00
役所広司が語る『THE DAYS』に込めた切なる想い。「世界の人たちにあの事故がどんなものだったのかを知ってもらいたい」
ここでもし判断を間違えれば、原発の爆発や放射能による未曾有の被害を世界にもたらしてしまうことになる。あの日、所長が抱えていたプレッシャーがどのようなものだったのか、正確に理解できる人間はおそらくいないだろう。
「放射能の線量に関しては知識としては持っていたと思います。でも実際には放射能には匂いがあるわけではないですし、目にできるものは(線量の)数字だけです。もちろん、ここで何か起こってしまえば、被害は原発の中だけでは済まされないわけで、その重責というものは背負っても背負いきれるものではない。だからこそ吉田所長は、目の前の部下たちの無事を祈っていたのではないでしょうか。部下をひとりも死なせたくないという気持ちを誰よりも持っていたと思いますし、それでも彼らを事故の対応に向かわせなければならない。それはすごいストレスだったと思います」
役所が語るとおり、本作で描かれる吉田所長は常に複数の感情が幾重にも重なり、所員を守りたい気持ちと、所員に危険な指示を出さなければならない状況の間に立たされている。
ひと言で説明できない感情、善悪だけでは判断できない選択……そんな状況がかつてこの国で本当に起こったのだ。