あらゆる困難を鎮めるために演劇はある 『子午線の祀り』成河インタビュー【後編】
義経は、戦さにおいては天才とか残虐とか、何かと常人離れしたところを強調されますが、追いつめられた人間は何でもする、と考えれば「そりゃそうするよね」と、その行動については理解できました。義経は、自分はいつ死んでもいいと思っているんです。勝つことでしか兄の頼朝とつながれないから、追いつめられれば、戦いのルールなんか無視して戦って、勝つ。するとまた追いつめられて、の繰り返し。知盛も義経もそんな断絶した世界に生きているわけですが、そこに超越的な天の視点の語りが入ることで、いつも頭の片隅にその視点が引っかかっている状態で演じることになるし、そう見えてくるところが素晴らしいと思います。
――天頂から見下ろされる。これより上はないところからの視線の影響は絶大ですね。しかも「あなたは」ときますからね。
「私たち」でも「わが国」でも「僕たち演劇人」でもない。そんな生ぬるい話をしているんじゃなくて、他の誰でもない、「あなたのことを考えてください」と名指しされてるんですよ。「あなたの足の裏から頭へ突きぬけて――」。自分の足の裏に感じる地球への重力を考えろって、いや本気だなぁ! と思いますね。とんでもない作品ですよ。