2023年11月6日 12:00
【おとなの映画ガイド】私はアブノーマル? 多様性の意味を問う──『正欲』。稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗出演
この映画は、まさにそういう時流の象徴かもしれない。
5人の男女をメインにした群像劇だ。稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香が演じている。別々の場所で生活し、境遇も違う彼らの日々が並行して描かれ、時間の経過とともに、交差し、からみ合い、そして事件がおきる、という展開。
この5人の日常のなかで、フェティシズム、同性愛、小児性愛、男性恐怖症、ルッキズム、そして不登校といった現代の諸相も、映し出す。
脚本は、『あゝ、荒野』に続き岸善幸監督とタッグを組んだ港岳彦が手がけ、朝井リョウの原作小説とは少し構成を変えている。
稲垣吾郎が演じる横浜地方検察庁の検事・寺井啓喜は、不登校で引きこもりの息子を抱え、妻との関係はあまりよくない。ごく“普通”の、つまり大多数の指向をもった中年男性、という設定だ。検察事務官(宇野祥平)と共に担当する事件の中で、世の中のさまざまなマイノリティと関わりを持つことになるが、今回の事件によって彼の中にも、ある変化が訪れる。
桐生夏月(新垣結衣)は、地元広島のショッピングモールで働くアラサーの独身。彼女は、中学の同窓会で佐々木佳道(磯村勇斗)と再会し、中学時代から抱いていた不思議なシンパシーを思い出す。