2020年1月10日 10:00
独裁者の物語を草なぎ剛がどう演じるか、『アルトゥロ・ウイの興隆』開幕
第2次世界大戦後13年でようやく上演されたという事実は、ヒトラーの残した傷跡がいかに根深いものだったかを証明しているだろう。
それからさらに62年。今の世界状況はブレヒトが冷ややかに見つめていた当時と、少しずつ輪郭を同じくしていると言われる。ヒトラーの絶妙な演説が大衆を心地よく酔わせ、“浮動票”といわれる層を掌握することによって独裁者となったことは有名だ。そのブレヒトの視点は保ちつつ、白井は今回、劇中の音楽をキング・オブ・ソウルと呼ばれるジェームス・ブラウンの楽曲を中心に構成。「68〜72年のFUNKサウンドを現代に蘇らせる」をコンセプトに30年近く活動しているオーサカ=モノレールの生演奏で贈る。
宣伝ビジュアルでは、ナチスの軍服を思わせる赤と黒の衣裳を着込んだ草なぎの不敵な姿が印象的だ。社会状況と地続きの芸術といわれる演劇。
その生の舞台で、役者・草なぎ剛のまた新たな表情が見られるに違いない。KAAT 神奈川芸術劇場 ホールにて2月2日(日)まで上演。
文:佐藤さくら
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