注目の劇作家・野木萌葱が初の新国立劇場で描いた『骨と十字架』とは
「本を読んで、うわ、これは手強いわ、でも興味が沸いてしまったな…と思ったんですね。出会ったな、という感覚でした」。
キリスト教的進化論を提唱し、当時、進化論を認めていなかったローマ教皇庁から教義に反する異端者と責められるテイヤール。後に北京原人を発見して脚光を浴びるこのフランス人学者を題材に、野木の中でドラマが走り出した。ある人間の、迫害に屈することなく信仰と学問に向けて貫いた信念、その生き様が、彼を取り巻く人々との躍動感あふれるやりとりから浮かび上がってくる。テイヤール(神農)と、彼を心配する弟子リュバック(佐藤)、鋭利な視点で彼に助言する司祭リサン(伊達)、コトを穏便に済ませたいイエズス会総長(小林)、そして執拗にテイヤールを糾弾する検邪聖省の司祭ラグランジュ(近藤)。5人の実在するキャラクターの見事な配置、その物語展開は綿密なプロットから生まれたものと早合点したが、野木は笑顔で首を振った。
「とくに“これを書こう”と準備してはいないんですね。
今回も、学問と宗教の狭間にいた、一人の司祭の姿を描こう!と最初に思ったわけではなくて……。登場人物も、この人はこういう人と決めることはしていません。