驚異の映像体験! 話題作『1917 命をかけた伝令』が公開
映画はふたりの兵士のミッションを全編ワンカット風に描いており、いくつかに分割して撮影した長いショットを巧みな編集でつなぎ合わせている。しかし、この手法は難題の連続だ。長回しのため、誰かがミスすると最初からすべてやり直しで、あるセリフが終わるジャストなタイミングで自動車が到着したり、目的地にたどり着かなければシーンが成立しない。複数の日にわたって撮影されてはいるが、劇中ではたった1日の出来事なので、曇り空でなければ撮影は中止。カメラが縦横無尽に俳優にまわりこむため、照明が仕込めず、カメラ近くにスタッフは待機できない。すべてを入念に準備して、何カ月もかけて実地を歩きながら脚本を修正し、半年かけて俳優がリハーサルしても、兵士の行程を描く作品のため、ひとつのロケ地は劇中では1回しか出てこない。
この圧倒的に手間とスキルと集中力を必要とする撮影手法をメンデス監督はあえて選択。彼と長年に渡ってチームを組んできた名撮影監督ロジャー・ディーキンス、スゴ腕の美術監督デニス・ガスナーらが集結して驚異の映像を描き出した。
そのビジュアルは観客が戦場にいるかのような“没入感”を感じさせるが、単にカメラが兵士と並走するような安易なものではなく、時に劇中の主人公たちに寄り添い、時に水の上を浮遊しながら引いた位置で彼らの動きを捉え、時に複雑な軌道を描きながら複数のドラマをひと続きのショットでおさめていく。